明治憲法下の財政制度

財務省発行の雑誌「ファイナンス」に好評連載中(確証はない).
単行本化されるかどうか分からないので日比谷図書館に行って連載分のコピーを取った.
1ページ25円もするため3000円近くになる.ハードカバーが買える値段だが,十二分に元は取れた.

明治憲法が発布された後の明治政府の財務状況,議会の予算編成などが時代に沿って詳しく書かれており,純粋に歴史読み物として面白い.

借金漬けだった明治政府の予算は,議会の圧力により毎年“前年度以下”に抑制されており一刻も早く軍艦を整備して国の安全を確保し,また製鉄所を建設し産業を振興したい政府としては歯がゆい思いだっただろう.不平等条約改正の大きな目的が関税収入の確保にあったことは驚きだった.条約改正前の関税収入439万円に対し,改正後明治40年の収入は5002万円となったのである.ちなみに歳入総額は約3億円(明治33年時点)であった.

また,問題となる治外法権についても当時の日本における法整備の不備に問題があったことも原因である.刑罰に火あぶり,磔があったり,キリスト教邪教であったりしたわけで,これでは文明国扱いされずとも仕方がない部分があったと思われる.

載っている雑誌が雑誌だけに財務制度などは知っている事が前提で書かれているため難解な部分もあるが概ね分かりやすい.何より予算の数字を通して明治政府の焦りや目的がありありと見えてくるのが本連載の売りであろう.