補給戦 その2
16世紀からナポレオンまで読了.
感想:この時代(特にナポレオン以前)の戦争はショボイ.戦争目的が相手に自分のいうことを聞かせ(専制君主だし),かつ高い金で雇った兵隊を消耗させない事にあるため,軍隊は「相手領地に侵攻し現地に居座らせる」というヤクザのごとき様相を呈する事になる.しかも食料の問題から一ヶ所に長くは滞在できず,敵国領地で巡回セールスマン問題を解きつつ「敵中突破逃走」を強いられる事になる.
弾薬消費は非常に少ない.兵隊が背負う量で賄えるほど.問題は食糧.とくにウマの食料(かいば)を調達することが大きな負担となった.馬車での輸送も行ってはいたが,現地調達に比べてあまりに非効率的であるために流行らなかった(むしろ現地調達が新しい戦略?).
ただし略奪行為も効率が悪い.部隊は略奪行動*1中は行軍を中止せねばならず,これも大きな負担.当然貧困地域では補給など出来ない.
当時唯一本国から満足な補給が出来たのは水路・河川経由の輸送.そのため河川から大きく離れて行動できない.また合流に失敗するととたんに飢える.
補給すべき物資がほぼ食料のみだったため,現地調達が最も効率が良い.ただし行軍ルートは常にルート上の食料生産能力の制約を受ける.一度通った地域は食い尽くしてしまうため2度とは使えない.貧困地域は行軍に適さない.敵軍の有無よりも食料調達ルートによって行軍ルートが決まる.
- 作者: マーチン・ファンクレフェルト,Martin van Creveld,佐藤佐三郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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現代の「指揮官の命令に従い」「全方向に移動でき」「補給物資が後方から届けられる」軍隊はこの時代の指揮官から見ると夢のようなものなのだろう.
*1:畑に入ってかいばを刈ったり,麦を刈ってパンを焼いたり.パン焼き職人を連れてくる